相続の初歩・キホン用語

ここでは、相続手続きの際に最低限知っておきたい用語や情報をご紹介します。

  • 被相続人とは、いわゆる亡くなられた方で相続の対象となる財産を残した人のことです。
  • 相続人とは、その相続対象の財産を受け取る側の人のことです。

法律(民法)で定められている相続人を法定相続人といいます。配偶者は常に相続人(配偶者相続人)になります。その他の法定相続人(血族相続人)には以下のとおりです。

  • 被相続人の子ども等の直系卑属 (第1順位)
  • 被相続人の親や祖父母等の直系尊属(第2順位)
  • 被相続人の兄弟姉妹(第3順位)   

 相続手続きを始めるにあたって「相続人の確定」作業はとても重要になります。なぜなら相続人でない者を加えた遺産分割協議」「相続人の一部を除いた遺産分割協議」は無効になってしまうからです。

苦労してようやく合意した分割協議を再び行なうことは、問題が複雑化して再合意できなくなってしまうケースも多々あるのです。

「相続人の確定」は戸籍を調べることで正確にわかるのですが、この作業は意外に面倒なもので専門知識も必要になります。相続人の確定には、関係する戸籍謄本類等の取り寄せや綿密な調査が必要になりますので、ご不安でしたら弊事務所までお問い合わせください。

法定相続分

相続については、被相続人の意思である「遺言」が最優先されるので、遺言で相続分を指定されているときは法定相続分に先立ってその遺言の内容が適用されます。しかし、遺言がない場合や遺産分割協議をしない場合には法定相続分により遺産が分割されることになります。

相続分割合については昭和55年に民法の一部改正され、配偶者の相続分割合が変更されました。(昭和56年1月1日施行)

<昭和55年12月31日以前に相続が開始している場合には現在の相続分割合と違い、以下のような相続分割合になりますので注意が必要です>

__sozai__/0012127.png「子供」と「配偶者」が相続人の場合(第1順位)

被相続人の子が相続人である場合は何代でも代襲相続されます。なお、配偶者には代襲相続権はありません。

  • 被相続人が昭和22年5月3日〜昭和22年12月31日までに死亡の場合
    配偶者が1/3、子どもが2/3の割合になります。
  • 被相続人が昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日までに死亡の場合 
    配偶者が1/3、子どもが2/3の割合になります。
  • 被相続人が昭和56年1月1日〜現在までに死亡の場合
    配偶者が1/2、子どもが1/2の割合になります。
    この場合子どもが複数いるときはこの1/2を
    子供の数で均等に分けた割合となります。

__sozai__/0012127.png「直系尊属(父母)」と「配偶者」が相続人の場合(第2順位)

第2順位相続人である直系尊属は、最初に両親、両親が亡くなっていた時は祖父母、祖父母も亡くなっていた時は曾祖父母と上がっていきますが、養親があるときには「実親」と「養親」の全てが亡くなった場合、初めて祖父母が相続人となります。直系尊属には代襲相続権はありません。

  • 被相続人が昭和22年5月3日〜昭和22年12月31日までに死亡の場合
    配偶者が1/2、直系尊属が1/2の割合になります。
  • 被相続人が昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日までに死亡の場合
    配偶者が1/2、直系尊属が1/2の割合になります。 
  • 被相続人が昭和56年1月1日〜現在までに死亡の場合
    配偶者が2/3、直系尊属が1/3になります。
    この場合も被相続人の父母がいる場合は
    その数で均等に分けます。

__sozai__/0012127.png「兄弟姉妹」と「配偶者」が相続人の場合(第3順位)

  • 被相続人が昭和22年5月3日〜昭和22年12月31日までに死亡の場合
    配偶者が2/3、兄弟姉妹が1/3の割合になります。
    この期間の
    兄弟姉妹には代襲相続の権利はありません。
  • 被相続人が昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日までに死亡の場合
    配偶者が2/3、兄弟姉妹が1/3です。
    兄弟姉妹の直系卑属(甥・姪)は代襲相続人になります。再代襲がありますので、甥姪の子(姪孫、又甥、又姪)も代襲相続人になります。 
  • 被相続人が昭和56年1月1日〜現在までに死亡の場合
    配偶者が3/4、兄弟姉妹1/4になります。
    兄弟姉妹の直系卑属(甥姪)は代襲相続人になります。ただし現民法では
    再代襲はないので代襲相続人は甥・姪までになります。

代襲相続

代襲相続とは、本来ならば相続人になるはずだった子(または兄弟姉妹)が、相続の開始(被相続人の死亡)前に死亡しているときに、その子(または相続人になるはずであった兄弟姉妹の子)が代わりに相続することをいいます。

被相続人の子供が被相続人より先に亡くなっている場合、その子(孫)は相続人になるのです。孫もすでに亡くなっている場合は、ひ孫が相続人になります。直系卑属については被相続人から直線的にずっと何代でも代襲します。

このように直系卑属では再代襲によって相続権がありますが、直系卑属ではない配偶者の連れ子(被相続人と養子縁組していない場合)には代襲相続はありません。

兄弟姉妹が相続人になる場合で注意点!
特に
問題になるのが代襲相続です。この場合の代襲相続とは、相続人である兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合のことをいいます。兄弟姉妹に子供がいればその子供が相続人になります。被相続人からみれば甥・姪にあたります。さらに、この甥・姪も被相続人より前に亡くなっている場合、更に代襲相続になり、これを再代襲相続といいます。再代襲相続では既述通り、昭和56年1月1日を境にして扱いが異なります。 

__sozai__/0011814.gif 昭和55年12月31日以前に被相続人が亡くなった場合
再代襲によって被相続人の直系卑属であるひ孫と同様に甥、姪の子供にも相続権があります。

__sozai__/0011814.gif昭和56年1月1日以降に被相続人が亡くなった場合
兄弟姉妹の場合、甥・姪の子供には再代襲による相続権がありません。一般的に甥・姪の子と被相続人の関係は希薄だと思われるのでその相続する権利を保障する必要はなく、また相続関係が広範囲になることによる不利益を防いでいるのです。

  • 「相続欠格」や「相続廃除」に相続人が該当した場合では、その子供に代襲相続が認められます。
  • 相続人が「相続放棄」をした場合には、その子供には代襲相続は認められません。

__sozai__/0011814.gif養子縁組と代襲相続の関係

  • 養子縁組に生まれた子(連れ子)は直系卑属となりませんので代襲相続をしません。
  • 養子縁組に生まれた子については直系卑属となりますので代襲相続をします。

__sozai__/0011814.gif同時死亡の推定と代襲相続の関係

  • 同時に死亡した者の間においては「相続」は発生しません。例えば、父と長男が墜落した飛行機に同乗しており、その全員が死亡した場合には、父と長男は同時に死亡したことになり、長男は父の遺産を相続することはありません。
  • 一方、民法887条の2では「被相続人の子が相続の開始以前に死亡したときは、代襲相続が開始される」とされていますので、長男に子がある場合は、その子が長男に代わって父の遺産を代襲相続することになります。
  • この同時死亡はあくまで「推定」です。したがって、後にどちらが先に亡くなったかの先後関係を示す証拠がでてくればその推定を覆すことも可能になります。

「嫡出子」と「非嫡出子」 
  • 嫡出子
    嫡出子とは,法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子のことを言います。原則として、婚姻後に法律上の夫婦間で生まれた子は嫡出子として扱われます。嫡出子の身分はその後その夫婦が離婚したとしても変わりません。
  • 非嫡出子
    法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子を非嫡出子といいます。非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1と定められています。(この相続割合は改正される予定です)
    嫡出子、非嫡出子で差異が生じるのは,嫡出子と非嫡出子が双方相続人になる場合だけです。
    「配偶者」と「非嫡出子」だけが相続人になる場合、その相続分は配偶者と子の法定相続分とおり1/2ずつになります。
「全血兄弟姉妹」と「半血兄弟姉妹」
  • 全血兄弟姉妹
    全血兄弟姉妹とは、父母双方を同じくする兄弟姉妹をいいます。
  • 半血兄弟姉妹
    半血兄弟姉妹とは、父母のどちらか一方を同じくする兄弟姉妹です。たとえば「先夫や先妻の子」と「後夫や後妻の子」の関係です。

法律上は両親の一方が同じである限り、その子たちは兄弟姉妹の関係になります。そしてこの「全血兄弟姉妹」と「半決兄弟姉妹」の問題は、被相続人に「配偶者がない」「子供がない」「両親も亡くなっている」場合に起こることになります。

 被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合、半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の相続分の1/2になります。全血兄弟姉妹か半血兄弟姉妹かは被相続人から見て決められるのです。

相続欠格・廃除・特別縁故者
  • 相続欠格
    相続欠格とは、本来は相続人になれるはずの人(推定相続人)でも法に触れる行為をした場合などの一定の事情があると相続人にはなれないことを言います。
  • 廃除
    廃除とは、欠格ほどの理由が無い場合でも被相続人の意思によって相続権を奪う制度です。廃除の請求は被相続人の自由ですから、被相続人が請求しない限り廃除はありません。
  • 特別縁故者
    特別縁故者とは「内縁の妻」「事実上の養子」「療養看護に努めた人」などが該当します。被相続者に相続人の不在が確定した場合、被相続人の遺産は債権者への清算・受遺者への分配などを行ったあとに特別縁故者への分与が行われます。
相続放棄・単純承認・限定承認

遺産(相続財産)とは、被相続人が死亡時に残した財産です。それには当然プラスの財産だけではなくマイナスの財産である債務(借金)なども含まれます。つまりプラス財産より債務などのマイナス財産が大きい場合、親の借金を子が背負わなければいけないことになります。

そこで民法では「相続があったことを知った日から3ヵ月以内(熟慮期間)にどのような相続にするのか(相続放棄・単純承認・限定承認)」を、相続人が自由に選択できるようにしました。

 相続放棄
相続放棄とは、借金などの債務はもちろん相続財産の受け入れるのを一切拒否することです。しかし、相続放棄者であっても生命保険金のような「みなし相続財産」は受け取ることはできます
この場合は「遺贈により取得したものとみなす」とされ、相続税の納税義務は発生します。

 相続放棄」と「相続分の放棄」の違い!

  • 相続の放棄」をすると、最初から相続人とならなかったものとみなされます。当初から相続人ではなくなるのです。ですから資産のみならず債務も相続することはありません。
  • 「相続分の放棄」は、いったん相続人になったことを前提にして、その相続分を放棄するというものです。相続人としての地位を得た上で、放棄した持分を他の相続人が相続分割合に従って取得するものです。ですから「相続分の放棄」をしても原則として債務は相続されることになります。
    「相続分の放棄」は「相続放棄」と違い、相続放棄の場合に要求される家庭裁判所への申述は必要ありません。具体的には、他の相続人に対し印鑑証明書を添付しの放棄の内容を記載した書面や遺産分割協議からの脱退書などを交付するなどの方法によっておこないます。

「相続分の放棄」があった場合の他の相続人の相続割合は以下の通りで少し複雑になります。

 相続人が被相続人の「配偶者W」「長女A」「長男B」の場合
 (法定相続分は配偶者W1/2、A1/4、B1/4になります)

  • Aが自分の相続分の放棄をした場合、Aの1/4の相続分をWとBに「残された相続人の相続分」に応じて分配されます。つまり、以下の計算のように、その相割合はWが2/3、Bが1/3になります。
    <基本的な計算方法>
    T.相続分放棄者A以外の相続人W,Bの各相続分の合計を求める。
      1/2 + 1/4 = 3/4・・@ 
    U.@の値を1とした場合のW、Aの各修正割合を求める。
      Wの割合 3/4:1=1/2:X よって X=1/2÷3/4  X=2/3 
      Aの割合  3/4:1=1/4:X よって X=1/4÷3/4  X=1/3

相続人や相続分放棄者が多数の場合は、以下の計算方法を使います。

  • 残された相続人の相続分を計算するには「全員の相続分について分母を合わせ(通分して)、相続分放棄者の分子の合計値を分母から減ずる」ことで全員の相続分を算出することができます。
    <上記の例での計算>
     Wの割合 通分後2/4(分母4-1=3、分子はそのまま)・・2/3
     Aの割合  通分後1/4(分母4-1=3、分子はそのまま)・・1/3


__sozai__/0012127.png単純承認
単純承認とは「被相続人の財産と債務を無条件、無制限に承認する」という相続です。一般に「相続する」というのはこの単純承認のことになります。

__sozai__/0012127.png
限定承認
限定承認とは「相続する財産の額を限度に被相続人の債務を負担する」という条件つきの相続をいいます。

  • 限定承認は、3ヶ月の熟慮期間中に相続人全員で家庭裁判所へ申述しなければいけません。
  • 相続放棄による相続順位の順送りを食い止めたいときに限定承認を行います。限定承認はあくまでも「相続」であるので相続順位が次順位に進みません。
  • 限定承認をした場合は、被相続人の土地・建物・株式などの値上がり益部分について、譲渡所得の対象となり所得税課税が生じます。税法上、被相続人から相続人へ「時価で」資産の譲渡があったとされます。
    準確定申告において譲渡所得として計算されますが、その所得税は相続税の債務控除の対象となります。

「相続放棄」「単純承認」「限定承認」はどれも一度行ったら原則変更することができません。したがってくれぐれも慎重に決断する必要がありますが、諸事情によりどの方法を選択すればよいのかなかなか決められないこともあります。そのような場合には「相続の承認または放棄の期間伸長を求める審判」を家庭裁判所に申立することができます。 

寄与分・特別受益

「寄与分」「特別受益」は、相続人の間で不公平感が残らないようにつくられた制度です。寄与分、特別受益の割合は共に遺産分割協議で相続人全員の合意によるか、または調停などで家庭裁判所によって定められることになります。

__sozai__/0012127.png 寄与分

「寄与分」とは相続人の中で被相続人の「財産形成や療養看護」等をして特に被相続人に寄与した人に対して、本来の相続分とは別にその寄与分を相続財産の中から取得できるようにする制度です。

寄与分は民法で認められているといってもその割合までは定められていません。つまり、寄与分は主張したからといって認められるのもではありません。

なお、相続人の配偶者や子供が相続人に代わって特別な寄与をした場合は、その相続人の寄与分として主張することもできます。

被相続人が遺言で「すべての遺産の分割方法を指定」しておくと、相続人の寄与分の主張を封ずることができます。被相続人が遺贈する場合には、寄与分は相続開始時に有した財産の価額から遺贈の額を控除した額を超えることはできない(民法904条の2第3項)とあります。
この寄与分制度は、被相続人の意思に反しない限りでの寄与の保障にすぎないので、
遺言ですべての遺産の分割方法を指定しておけば寄与分の機能する余地がなくなるのです。

  • 相続分の指定
    相続分の指定とは、被相続人の意思に基づき共同相続人の中の一定の者について、法定相続割合と異なった割合を定めることをいいます。すなわち、分数的割合を示して共同相続人全員の法定相続分割合を変更することです。
  • 遺産分割方法の指定
    遺産を現物で分ける現物分割、売却して価額で分割する換価分割、相続人の1人が財産を取得して他の相続人に代償金を支払わせる代償分割、共有とする共有分割等の方法を定めることをいいます。

__sozai__/0012127.png 特別受益

被相続人が生前に相続人に対して資金などを援助した場合(特別受益といいます)、遺産分割の際にその援助分は相続財産の先取りとみなされます。

この特別受益は、遺産分割の対象となる被相続人の財産に計算上戻さなければなりません。注意しなければならないのは、その評価の基準は相続開始時の時価で計算されることです。特に不動産などの場合、値上がりの為贈与時の価格とかけ離れることがあり、計算上不利になってしまいます。

こういった事態を防ぐには、遺言で「生前に贈与した土地・建物については特別受益の持戻しを免除する」と明記しておきます。

民法903条1項には、具体的相続分を計算する際の基礎となるみなし相続財産を確定するときには、「相続開始時に現存する相続財産」の額に、相続人が受けた「贈与」の額を加算することとされています。
「すべての遺産の分割方法を指定」する遺言方法により、特別受益の持戻しの問題も、各相続人の遺留分を侵害しない限り生じないことになります。
特別受益は、それ自体独立して紛争となることはなく、遺産分割の前提問題、又は遺留分減殺請求の前提問題として争われる場合にのみ紛争の対象となるからです。

<特別受益の種類>  
__sozai__/0011814.gif 「遺贈」
その目的にかかわりなく包括遺贈も特定遺贈もすべて特別受益になります。「相続させる」という遺言も遺贈に準じます。
__sozai__/0011814.gif 「生前贈与」
生前贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断します。以下の贈与の場合に特別受益の対象となります。

  1. 婚姻又は養子縁組のための贈与
    ただし結納金・挙式費用は、一般的には遺産の前渡しと言ませんから特別受益には該当しないとされています。
  2. 学資等
    学資等は親の扶養義務の一部とみられることもあります。
  3. その他の生計の資本としての贈与
    具体的には子が親から独立する際の不動産の分与や営業資金の贈与などが考えられます。つまり、遊興費支払いのための金銭の贈与など生計の資本としての贈与に当たらない場合には特別受益になりません。

__sozai__/0011814.gif 判例による不動産の権利について「特別受益にあたるか」の判断

  • 土地の無償での使用
    親の土地に子供が建物を建築すると一般的には親子間での土地の使用貸借契約となります。相続時においてはその使用貸借権を特別受益としてその価格は下級級審の判決では当該使用貸借権の価格とされており、その使用貸借権の価格は不動産鑑定士による鑑定では更地価格の15%ほどを認めています。
  • 建物の無償使用
    ・親の建物に子が同居しているときは独立の占有が認められず、又扶養の範囲内とも考えられ一般的には特別受益とはならないと思われます。
    ・親の建物に子の家族等が独立の占有を有するときは(別の建物など)使用貸借契約の成立を認めることができます。この場合は特別受益になると考えられます。
  • 借地権の場合
    親名義の借地を生前に子供名義に書換えて子供が地代を支払うような場合には、借地権価額が高額となる可能性があるので借地権の生前贈与として特別受益となることあります。
  • 借家権の場合
    借家権は生前に名義変更をしたとしても、家賃の支払いを継続していれば特別受益にはならないケースが多いと思われます。

__sozai__/0011814.gif 相続人の一部に具体的相続分がゼロの特別受益者がいる場合の相続分
特別受益者の具体的相続分がゼロになったとき、特別受益者の相続分は他の相続人の相続分の割合に応じて他の相続人に帰属します。
具体的な計算方法は以下の通りです。

  1. 相続人全員の法定相続分を計算する(通分する)
  2. その中から特別受益者を除く他の相続人の法定相続分の「分子の合計」を「分母」とする
  3. それぞれの法定相続分の「分子」をその者の「分子」として計算する

遺産分割協議書を添付せず「特別受益証明書」だけを添付して相続登記する場合は、この方法による割合以外での申請はできません。

__sozai__/0012127.png相続分のないことの証明書(特別受益証明書)
相続分のないことの証明書とは、相続人の中に自分の相続分以上の特別受益(遺贈または生前贈与)を受けた場合に自分には相続分がないということを証明する書面です。
相続登記の申請に際し当該証明書が真正に作成されたことを証する為、この特別受益証明書には印鑑証明書の添付が必要になります。

  __sozai__/0011814.gif 「相続分のないことの証明書」のサンプル
   私は、被相続人〇〇〇(平成〇年〇月〇日死亡)
     本籍:〇県〇市〇町〇丁目 
     最後の住所:〇県〇市〇町〇丁目
   から生計の資本として財産の贈与を受けており、被相続人の死亡による相続について
   は、相続による相続分が存在しないことを証明します。

    平成〇年〇月〇日


    △県△市△町△丁目  相続人  〇〇〇   実印

代償分割・換価分割

__sozai__/0012127.png 代償分割

代償分割とは、特定の相続人が多く遺産を取得した場合、その分に見合った金銭を他の相続人に支払う遺産分割の方法です。遺産が店舗や作業場兼自宅であるような場合に特定の相続人に事業用資産を集中させるときなどに利用します。

  • 不動産を売却する予定がない場合には代償分割が有利です。
    これは通常、不動産の相続税評価額(相続税を計算する場合の金額)が時価(売却する場合の金額)より低いため代償分割の方が相続税が少なくなる理由からです。
    ただし、代償分割後、すぐに売却し代償債務の支払に充てるような場合には換価分割とみなされる場合があるので注意が必要です。代償金の支払期日や支払方法については、遺産分割協議書に明記しておくようにします。

__sozai__/0012127.png 換価分割
換価分割とは、遺産を売却しその売却額が決まってから売却額を相続人間で分配する方法です。相続人に
とっては利用価値のない不動産を相続する場合に利用します。

  • 不動産を売却する予定がある場合には換価分割が有利です。これは「相続税額の取得費加算」を「相続人全員で利用できる」ためです。
    換価分割した場合の相続税は、換価する前の遺産の評価額に対してかかります。売却金額がいくらでもそれは相続税とは無関係です。(換価分割した遺産には譲渡所得としての税金がかかります)

代償分割後に不動産を売却した場合には、取得した者が負担した相続税の分だけしか下記の「相続税額の取得費加算」の適用を受けることができません。
しかし、換価分割によれば相続人全員で売却したことになるため、取得費に加算できる相続税額を無駄にすることはありません。
ただし、相続税の申告期限から3年以内に売却することが要件となっていますので注意が必要です。


相続税額の取得費加算
相続等により取得した財産をその相続等の日の翌日から相続税の申告期限以後3年以内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定の金額が取得費に加算されます。
取得費が増えるということは、結果的に節税ができることになります。なお、この規定は住民税でも適用することができます。適用要件としては次の通りです。

  • 売却した資産を相続又は遺贈によって取得したこと
  • その相続で相続税が発生していること

その相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却していること。

遺留分

被相続人は自己の財産を「自由に」「無償で」処分することができます。つまり、遺言により相続分を指定したり、生前贈与することなどによって、全ての財産を特定の人に引き継がせることができるのです。

遺言者が残した遺言がある場合は、その内容が法定相続分よりも優先する事になります。

しかし、相続人のために被相続人の意思に関わらず必ず一定の財産を残さなくてはならない「遺留分」があります。

この「遺留分」とは、各相続人が受け取る権利のある最低限の相続財産のことをいいます。これに対して、遺留分に服さずに被相続人による自由な処分に委ねられている部分を「自由分」といいます。

遺留分を侵害した無償処分(例えば、贈与や遺贈など)は当然に無効になるわけではなく、遺留分権者が遺留分を主張するためには、遺留分減殺請求をしなければなりません。

遺留分減殺請求の通知については「配達証明付内容証明郵便」で行うのが通常です。

__sozai__/0012127.png遺留分の減殺を請求できる者(債権者による遺留分減殺請求権の代位行使はできません)

  • 相続人(兄弟姉妹及びその代襲者を除く)
  • 遺留分権者である相続人、包括受遺者、相続人の譲受人などの包括承継人
  • 特定承継人(例えば各処分行為に対する個別的な減殺請求権の譲受人)

__sozai__/0012127.png遺留分の割合

  • 昭和56年1月1日以降に開始した相続の場合
    「直系尊属のみ」が相続人である場合は、被相続人の財産の1/3が遺留分になります。それ以外の場合は、被相続人の財産の1/2が遺留分になります。
  • 昭和55年12月31日以前に開始した相続の場合
    「直系卑属のみ」が相続人であるとき及び「直系卑属」と「配偶者」が相続人の場合は被相続人の財産の1/2が遺留分になります。それ以外の場合は、被相続人の財産の1/3が遺留分になります。

__sozai__/0012127.png 遺留分の基本的算定式
個別的遺留分の割合=「相対的遺留分の割合」x「法定相続分の割合」

兄弟姉妹(1/4)と配偶者(3/4)が相続人の場合の「妻の遺留分」
兄弟姉妹には遺留分がありません。従って、配偶者の遺留分は3/4×1/2=3/8ではなく1/2になります。

__sozai__/0012127.png 遺留分額の算定
遺留分算定の基礎となる財産額は、相続開始時に被相続人が有した積極財産の価額に被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除したものになります。(民法1029条)。債務を控除するのは遺留分制度が「相続人が現実に取得する価額」を基礎として遺留分権者に一定割合を留保する制度であるからです。

加算される贈与(相続人以外への贈与を含む)は次のものです。

  1. 相続開始前の1年間にされた贈与
  2. 遺留分権者に損害を与えることを知って行われた贈与(相続開始1年前に限りません)
    「損害を加えることを知って」とは、遺留分を侵害する認識があればよく、損害を与えるという加害の意図や誰が遺留分権者であるかを知っている必要はありません。
  3. 不相当の対価でなされた有償処分
  4. 特別受益としての贈与
    特別受益としての贈与は、特段の事情がない限り相続開始1年前であるか否かを問わず、また損害を加えることの認識の有無を問わずすべて加算されます。また、被相続人による持ち戻し免除の意思があった場合でもその贈与価額は遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。

__sozai__/0012127.png遺留分で注意すること
相続欠格、廃除、相続放棄により相続権を失った者は、遺留分を主張する事はできなくなります。ただし、相続欠格、廃除の場合には代襲相続がありますので、これらの者の直系卑属が遺留分権者になります。

  • 遺留分減殺請求権は、相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内に遺留分を侵害している相手方に請求しなければ消滅時効によりその権利はなくなります。
  • 遺留分が侵害されていることを知らなくとも、遺留分減殺請求権は相続開始のときから10年経過すると同様に消滅時効により権利はなくなります。

__sozai__/0012127.png 遺留分の放棄ができる場合(相続開始前・相続開始後)
遺留分の放棄というのは、遺留分減殺請求をする権利を放棄することです。つまり「自分には相続分がないと遺言に書かれていても文句は言いません」ということです。逆に言えば、遺言で自分の相続分が遺留分より多かったり、あるいは遺言がなければ、遺留分を放棄していても何の影響も受けませんので、のまま相続できるのです。

遺留分は相続人固有の請求権ですので本来は自由に放棄できるはずです。しかし、相続開始前の遺留分の放棄を無制限に認めると、強要されるなどして自分の意思に反して遺留分の放棄がなされる可能性があります。

そこで、そのような事態が起こることを避け遺留分制度が骨抜きにならないように、民法1043条1項は「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずる」と規定しました。相続開始後の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可を受けなくても自由に放棄できます。

  • 「遺留分の放棄」は「相続の放棄」ではないので相続開始後は相続人のままです。「相続の放棄」の場合は初めから相続人とならなかったものとみなされます。(民法939条)
    つまり「遺留分を放棄」すると、遺留分を侵害する遺贈又は贈与がなされてもの減殺請求ができなくなりますが、相続権を有するので遺産分割により遺産を取得することはできます。
    この場合、被相続人に借金などの負債があるときは法定相続分で負担することになります。
  • 代襲相続の場合、被代襲者が遺留分の事前放棄をしておけば、代襲相続人は被代襲者の有していた権利しか取得できないので遺留分はないことになります。
  • 遺留分を放棄した者が、その代償として贈与を受けていた場合に遺留分を侵害された他の遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けると、遺留分を放棄した代償として贈与を受けた者も相続人であるので、その贈与は時期にかかわらず遺留分減殺請求の対象になります。従って代償としての贈与を確保できなくなるなどの不利益を受けます。
  • 遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分に影響を及ぼさないので、他の相続人の遺留分は増加しません。(民法1043条2項)

__sozai__/0011814.gif 相続開始前の遺留分放棄についての家庭裁判所の許可の基準

  • 遺留分を有する相続人の自由な意思に基づくものであること
    実際に、家庭裁判所の審判で相続人に遺留分の放棄の意思があるか確認されることになります。
  • 放棄の理由に合理性・必要性があるか
    例えば、農地や建物の所有者が多数人になることを防止したり、相続人の一部の方が会社や個人経営を継ぐ場合に、会社の株などの財産を後継者に相続させる場合などの理由が必要になります。
  • <審判例>
    申立人の両親が申立人の結婚に反対し、結婚を止めなければ両親の財産を与えることができない旨をかねてから主張していたが、申立人が結婚をすると決めたので両親は用意していた遺留分放棄申立書を取り出し、申立書に署名捺印させたという事情がある場合。
    家庭裁判所は、結婚問題に関する強度の干渉の結果と言わざるを得ず、合理的理由がないとして不許可にした例があります(大阪家審昭和46年7月31日)
  • <審判例>
    遺留分の放棄と引き換えにする贈与などは、先にされるか同時にする必要があるとされる傾向にあります。
    非嫡出子である申立人に5年後に贈与をするという約束の下で、遺留分の放棄の申し立てをした場合に、このような贈与は現実に履行されるかたやすく予断できないから、許可すると思わぬ損害を惹起する恐れがあるとして不許可になったものがあります。
    (神戸家審昭和40年10月26日)


                    

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